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打つや太鼓の音(ね)も すみ渡り
角兵衛 角兵衛 と招かれて、
居ながら見する石橋(しゃっきょう)の、
浮世を渡る 風雅者、
歌うも舞うも囃(はや)すのも、一人旅寝の草枕
おらが女房を誉(ほめ)るぢゃないが、飯も炊いたり水仕事、
麻よるたびの楽しみを、一人笑(えみ)して来たりける
越路(こしぢ)がた お国名物は様々あれど、
田舎訛(なま)りの片言(かたごと)交じり
しらうさになる言の葉を 雁の便りに屆けてほしや
小千谷縮(おぢやちぢみ)のどこやらが、見え透く国の習いにや
縁を結べば兄(あに)やさん、兄ぢゃないもの夫(つま)じゃもの
来るか来るかと浜へ出て見ればの ほいの
浜の松風 音やまさるや やっとかけのほい、まつかとな
好いた水仙すかれた柳、のほいの、
心石竹(こころせきちく)、気はや紅葉さ、やっとかけのほいまつかとな
辛苦甚句(しんく じんく)もおけさ節
何たらぐちだへ 牡丹は持たねど越後の獅子は
おのが姿を花とみて、庭に咲いたり咲かせたり、
そこのおけさに異なこと言われ、寝まり寝まらず待ち明かす、
御座れ話しませうぞ、こん木松の陰で、松の葉の様にこん細(こま)やかに
弾いて唄うや獅子の曲 向かい小山のしちく竹、
いたふし揃えて、きりを細かに
十七が室(むろ)の小口(こぐち)に昼寝して、
花の盛りを夢に見て候(そうろう)
見渡せば 見渡せば 西も東も花の顔、
何(いず)れ賑わう人の山 人の山
打寄る 打寄る 女波男波(めなみおなみ)の絶間なく、
逆巻水(さかまくみず)の面白や 面白や
晒す細布(ほそぬの) 手にくるくると、くるくると、
いざや帰らん おのが住家(すみか)へ
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文化8年(1811)、江戸・中村座、
3代目 中村歌右衛門(さんだいめ なかむら うたえもん、1778~1838年)によって初演された長唄「越後獅子」の歌詞を紹介しました。
作詞の篠田金次(しのだきんじ、1768~1819年)は江戸・中村座座付作者、作曲は9代目杵屋六左衛門(きねやろくざえもん、1756~1819)です。地唄の「越後獅子」の歌詞をほぼそのまま利用しているのは、役者どおしの対抗心(江戸・市村座で公演していた3代目 坂東三津五郎がライバルだった)で急ごしらえをさせたのが原因、と言われます。
ライバル心でも、構いません! とっても、面白い踊りですもの。
写真は水木歌惣のもの、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2019 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved. |
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