2018年12月7日金曜日

「傀儡師(かいらいし)」という踊り






清元「傀儡師(かいらいし」は本名題(ほんなだい)を「復新三組盃またあたらしく みつの さかずき」と言い、文政7年(1824)江戸・市村座において3代目 坂東三津五郎が初演した三変化舞踊です。2代目 桜田治助作詞、初代 清元斎兵衛作曲、松本五郎市振付と、伝わります。

※  浮世化傀儡師と外記傀儡師
※  清元「傀儡師(かいらいし)」全訳




////// 歴史

「傀儡師(かいらいし)」という言葉自体は、操り人形を扱う大道芸人の古称です。

古代から中世にかけてのこと、わが国に、男子は狩猟し女子は売笑しながら人形を回し見物料をとる、謎の漂白芸人・流民集団がありました。この人々が渡来人と噂されていたことから、日本語の「くぐつ師」ではなく、中国語の「傀儡師(かいらいし)」と呼ばれています。

この人々はのち浄瑠璃と出会って人形浄瑠璃の成立に貢献し、浄瑠璃運動に吸収される形で、流民集団としては平和裏(へいわり)に消滅してゆきます。



平成10年、歌泰会「傀儡師(かいらいし)」

なお、古浄瑠璃にかつて「外記節 (げきぶし) 」という流派があり、現在の浄瑠璃よりも硬派な内容だったと伝わります。この外記節初代 薩摩浄雲(さつま じょううん、1593~1672年)の門弟から曲をゆずられた初代 河東(かとう=江戸太夫河東、1684~1725年)が発表したのが河東節「浮世傀儡師(うかれ かいらいし)(1718年)で、そのあと外記節復活を目指し、長唄の「傀儡師(外記傀儡師、げき かいらいし)(1815年)が作られます。一番最後に成立した歌舞伎舞踊曲・清元「傀儡師(復新三組盃、1824年)」は、これら先行する「傀儡師」から影響を受けた内容になります。





////// 内容

外記節「傀儡師」をもとに三人息子(吉三はそのひとり)の物語が語られ、お七吉三(郎)の恋路を揶揄する弁長(=櫓お七の登場人物)の「チョボクレ(錫杖、鈴、木魚など叩きながら唄い踊る門付芸=かどづけ げい)」が続き、牛若丸と浄瑠璃姫の伝説上の恋が語られたあと、幽霊である平知盛(たいらの とももり)が登場します。

平成10年、歌泰会「傀儡師(かいらいし)」



////// 演出

人形芝居
変化舞踊ですので、それぞれ踊り分けなければいけません。「八百屋お七」に「牛若丸」、さらに「平知盛」とくれば登場人物の役に不足はないのですが、古浄瑠璃が元になっているせいか、曲としてはだいぶ単調に聞こえます。

やっと盛り上がるのは、チョボクレ「やれやれ、やれやれ、おぼくれちょんがれちょ」あたりからでしょうか。





////// 歌詞(三人息子から、お七吉三まで)

夜鷹(舟で売笑する女)
-原文-
  総領息子は親に似て
  色と名がつきゃ夜鷹でも ごぜでも巫女でも市子でも
  可愛いかわいが落合うて 女に憂身やつしごと
  二番息子は堅造で ぽきぽき折れるとげ茨
  三番息子は色白で
  お寺小姓にやり梅の 吉三と名をも夕日かげ

-現代語訳-
  跡取り息子は親に似て、
  女と見れば遊女舟あやつる夜鷹だろうが、
  目の見えない娘浄瑠璃の旅芸人だろうが、
  神社の巫女だろうが、あやしげな回遊潮来(いたこ)だろうが、
  かわいい、かわいそう、などと言って
  隠れて遭(あ)っては女のことでやきもきし、
  世間に公然とできないような隠しごとに、その身を削っている。
  二番目息子は堅物で、茨(いばら)の棘(とげ)のような男。
  三番目息子は色白に生まれ、寺小姓に売られて梅の花のように扱われ、
  その名も「吉三」などと、夕日の日陰者のような、
  生白い優男(やさおとこ)に育っちまった。

錦絵・櫓お七

-原文-
  それとお七はうしろから 見る目可愛き水仙の
  初に根締のうれしさに恋という字の書初を 湯島にかけし筆つばな
  八百屋万の神さんに 堅く誓いし縁結び 必ずやいの寄添えば
  そこらへひょっくり弁長が
  いよいよ 色のみばえだち 差合くらずにやってくりょ

-現代語訳-
  そんな吉三を、お七がどこかで見初(みそ)めたのさ。
  小さく可憐な水仙に、初めて根締(ね じめ)をするようなもの。
  恋しさがどんどん根っこに染み込み、
  湯島天神さまへ奉納する書初めに、
  お七はつたない文字で「恋」と書いたほどだった。
  八百屋だけに、やおよろずの神さまに、縁結びを堅く誓ったわけだ。
  必ず、寄り添ってみせると息巻くところへ弁長が現われ、
  お嬢さん、色に目覚めたんでやしょうが、しくじらないようやってくんな、と。


錦絵「弁慶、知盛、牛若丸(義経)」
-原文-
  やれェどらがにょらい
  やれやれやれやれ おぼくれちょんがれちょ
  そこらでちょっくらちょっと聞いてもくんねェ
  嘘ぢゃござらぬ 本郷辺りの八百屋のお娘が
  十六ささげになんねえ先から
  末は芽うどに 奈良漬なんぞと 胡麻せた固めを
  松露(しょうろ)のしるしに きしょうが書いたり 小指を胡瓜ゃ
  さりとはさりとは うるせえこんだに
  奇妙頂礼(きみょう ちょうらい)どら娘 これはさておき

-現代語訳-
  やいこら、どら如来、
  やれやれやれやれ、おぼくれちょんがれちょ。
  そこらでちょっくらちょっと聞いてもくんねェ。
  嘘じゃありませんぜ、本郷あたりの八百屋のお嬢が、
  十六にもなんねぇうちから
  「末は夫婦(めおと)になりたい」なんぞ、ませた口をね。
  約束のあかしだと言って起請文を書いたり、小指を切って捧げたり。
  吉三にはさぞや、うるせえことだろうよ。
  奇妙などら娘だよ。まぁ、それはさておきさ。

平成10年、歌泰会「傀儡師(かいらいし)」


手数が多く動きもあって難しいわりに、衣装が香具師(やし)なせいか華がない感じの舞踊です。ご見物さまを、チョボクレまで我慢させるのが少しばかり、たいへんです。

唄はめちゃくちゃ面白いのです。
どう魅せるか、ということを、あらためて考えさせられる演目ですね。



※  清元「傀儡師(かいらいし)」の原型、浮世化傀儡師と外記傀儡師
※  傀儡師よ永遠に。清元「傀儡師(かいらいし)」全訳






平成10年、仙台電力ホール「歌泰会」で踊った「傀儡師(かいらいし)」という踊りを、紹介させていただきました。

踊り説明記事は水木歌惣と水木歌惣事務局の共作になります。コメントは水木歌惣、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2018 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved.







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