2019年4月29日月曜日

怨念のかたまり。「静と知盛」知盛の段(舞踊鑑賞室)





あら不思議や 海上を見れば 西国(さいこく)にて滅びし平家の公達(きんだち)
一門の月卿(げっけい)雲霞(うんか)のごとく 浪に浮かびて見えたるぞや


(台詞)抑々(そもそも)これは桓武天皇九代(くだい)の後胤(こうえい)、平知盛幽霊なり あら珍しや 如何に義経 思いもよらぬ浦浪の

平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


声を知辺(しるべ)に出舟(いでふね)の 声を知辺(しるべ)に出舟(いでふね)


(台詞)知盛が沈みし 其のありさまに


又義経をも海に沈めんと 夕波に 浮べる 薙刀(なぎなた)とり直し
巴波の紋あたりを払ひ 潮を蹴立てて あく風を吹かけ
(まなこ)もくらみ 心も乱れて 前後を忘(ぼう)ずるばかりなり
其の時義経少しも騒がず 其の時義経少しも騒がず


平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


打物(うちもの)ぬき持ち、現(うつつ)の人に向ふがごとく
言葉をかはして戦ひ玉へば 弁慶押し隔て
打物(うちもの)(わざ)にて叶ふまじと
数珠さらと押(おし)もんで

東方降三世(とうほうに ごうさんぜ) 南方軍陀利夜叉(なんぽう ぐんだりやしゃ)
西方大威徳(さいほう だいいとく) 北方金剛夜叉明王(ほっぽう こんごうやしゃみょうおう)
中央大聖不動明王(ちゅうおう だいしょうふどうみょうおう)の策(さつく)にかけて祈り祈られ

平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


悪霊次第に遠ざかれば 弁慶舟子に力を合せ
御舟(みふね)を漕(こぎ)のけ 汀(みぎは)に寄すれば
(なほ)怨霊は慕ひ来るを追払ひ
(いのり)退け 又曳く汐にゆられ流れ 又曳く汐にゆられ流れて


平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


(あと)白浪とぞなりにける 跡(あと)白浪とぞなりにける

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明治18年、東京・新富座、9代目 市川団十郎(1838~1903年)らにより初演された歌舞伎舞踊の長唄「船弁慶」を、舞踊家・坂東三津之丞(1896~1966年)が舞踊劇に変えたものです。


※  悲しみをこらえて。「静と知盛」静の段(舞踊鑑賞室)
※  来世で会いましょう。長唄「静と知盛」という踊り(全訳)




義経主従を追いまわす、怨霊・平知盛の段をご紹介しました。

写真は水木歌惣のもの、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2019 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved.







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