2019年4月21日日曜日

悲しみをこらえて。「静と知盛」静の段(舞踊鑑賞室)






今日思い立つ旅ごろも 今日思い立つ旅ごろも
帰洛(きらく)をいつと定めぬ。
静は賜わる烏帽子(えぼし)を着け 扇をとりて立ち上がり 時の調子をとりあへず


(台詞)渡口の遊船は 風静まって出(い)

波濤(はとう)の謫所(たくしょ)は日晴れて見ゆ



平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」



(台詞)立舞うべくもあらぬ身の 袖うち振るも恥しや

春の曙 しろじろと 雪と御室(おむろ)や 地主(ぢしゅ) 初瀬(はつせ)
花の色香にひかされて 盛りを惜しむ諸人(もろひと)
散るをいとふや 嵐山

平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


花も青葉の 夏木立 茂り 鞍馬の山越えて
啼いて 北野の時鳥(ほととぎす)
(ただす)の森の 秋立ちて 涼しき風に乙女子(をとめご)
手振り優しき七夕の みやこ踊(おどり)のとりなりは
その名 高尾や通天(つうてん)の 紅葉恥かし紅模様(べにもよう)


平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」



野辺の錦(にしき)も冬枯れて 竹も伏見の白雪に 
宇治の網代(あぢろ)の川寒(かはさむ)み あさる千鳥の音も鳴きつれて 
吹雪に交(まぢ)り立舞うも 朝(あした)まばゆき 朝日山影(あさひやまかげ)


平成25年、仙台電力ホール、歌泰会「静と知盛」


静は名残り惜しまれて 涙にむせぶ 御(おん)別れ
見る目も哀れなりけり

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※  怨念のかたまり。「静と知盛」知盛の段(舞踊鑑賞室)
※  来世で会いましょう。長唄「静と知盛」という踊り(全訳)



悲しみを押し殺して別れのための舞を見せる、静御前の段をご紹介しました。

写真は水木歌惣のもの、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2019 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved.







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