賑(にぎわ)ひは 花の東の浅草寺 金竜山の名にしるき
ご利生(りしょう)も 身に澤潟屋(おもだかや)
八百八町ごひいきを めぐりくるくる 独楽売(こまうり)が
<台詞> さぁさぁこれは お子ども衆のお慰み 評判の独楽ぢゃ 独楽ぢゃ
商(あきな)う品は大独楽小独楽 廻らば廻れ門礼(かどれい)も
屠蘇(とそ)の機嫌の調子よく
沖ぢゃえ沖ぢや 朝夕まわる汐(しお)
さしたり引いたり帆がまわる 舟にゆられて眼がまわる
えぇしょんがえ
平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」 |
身は 気散(きさん)じな世わたりや
大路(おおぢ)をわたる初東風(はつこち)に 浮かれうかれて来たりける
<台詞> えへん 古めかしくも言い立ては そもそも独楽のはじまりは
古(ふ)りし延喜(えんぎ)の御代(みよ)かとよ
時平(しへい)の大臣(おとど)の よこしまより
筑紫へ遠くさすらいの 菅丞相(かんしょうじょう)が愛樹(あいじゅ)の梅
東風(こち)吹かば 匂ひおこせ とよみたまふ
君が情けの通ひては 花もの言はねど都(みやこ)より ひと夜のうちに飛び梅の
その枯木(かれき)にて 手ずさみの 姿も優な小松ぶり(※独楽の古名)
冠(かぶ)りの紐をきりりとしやんと巻いて 投げては えいと引く
さっさ引け引け 五色の独楽や御所車(ごしょぐるま)
ありやありや こりやこりや やっとな
酒がすぎたか目元が桜 梅は笑へど常(つね)の癖味(くせあぢ)に 拗ねたる松の振り
平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」 |
三つ子の親は七十の 賀の祝ひとて なますやら
米炊(か)し 味噌摺(す)り あたふたと
きざむ嫁菜(よめな)の姉妹(あねいもと) 色香を添へてなまめかし
約束かたき心棒(しんぼう)に やがてもうけし 子持独楽(こもちごま)
孫彦玄孫(まごひこ やしゃご)と末広(すえひろ)に
黄金銭独楽(こがねぜにごま) うなり独楽(ごま)
ごんごん独楽(ごま)の鳴りもよく 天下とるとる 投げ取りの
曲はさまざま それ 綱渡り(つなわたり)
燕廻(つばめまわ)しや 風車 めぐる月日が縁となり
一寸(ちょっと)格子へ 煙管(きせる)の火皿(ひざら)が 熱くなるほど登りつめ
二階で廻る さんさん盃(さかづき)
平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」 |
とんだりはねたり 雷門(かみなりもん)の助六さんでは無けれども
衣紋流し(えもんながし)の居続けは しんぞ 命の雪見酒
おっとそこらで とまらんせ
止めても止まらずくるくると 寿命は尽きぬ 独楽(こま)しらべ
めでたかりける 次第なり
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平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」 |
演目名・「独楽(こま)」※独楽売萬作(こまうりの まんさく)
初演・昭和3年(1928)、東京・歌舞伎座 2代目 市川猿之助(1888~1963年)
作曲・3代目 常磐津文字衛(ときわず もじべえ、1888~1960年)
作詞・木村富子(1890~1944年)
振付・2代目 花柳寿輔(はなやぎ じゅすけ、1893~1970年)
初代 市川猿之助(1855~1922年)が演じたものを2代目が再演しようとしたところ、歌詞も音曲も失われており、仕方なく新作したと伝わる演目です。ところがこの出来がとても良く、たいへんな人気演目になりました。
写真は水木歌惣のもの、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2019 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved. |
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