2019年4月6日土曜日

観音さまのいたずら?常磐津「独楽(こま)」(舞踊鑑賞室)






(にぎわ)ひは 花の東の浅草寺 金竜山の名にしるき
ご利生(りしょう)も 身に澤潟屋(おもだかや)
八百八町ごひいきを めぐりくるくる 独楽売(こまうり)

<台詞> さぁさぁこれは お子ども衆のお慰み 評判の独楽ぢゃ 独楽ぢゃ


(あきな)う品は大独楽小独楽 廻らば廻れ門礼(かどれい)
屠蘇(とそ)の機嫌の調子よく
沖ぢゃえ沖ぢや 朝夕まわる汐(しお)
さしたり引いたり帆がまわる 舟にゆられて眼がまわる
えぇしょんがえ

平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」




身は 気散(きさん)じな世わたりや
大路(おおぢ)をわたる初東風(はつこち)に 浮かれうかれて来たりける

<台詞> えへん 古めかしくも言い立ては そもそも独楽のはじまりは


(ふ)りし延喜(えんぎ)の御代(みよ)かとよ
時平(しへい)の大臣(おとど)の よこしまより
筑紫へ遠くさすらいの 菅丞相(かんしょうじょう)が愛樹(あいじゅ)の梅
東風(こち)吹かば 匂ひおこせ とよみたまふ

君が情けの通ひては 花もの言はねど都(みやこ)より ひと夜のうちに飛び梅の
その枯木(かれき)にて 手ずさみの 姿も優な小松ぶり(※独楽の古名)

(かぶ)りの紐をきりりとしやんと巻いて 投げては えいと引く
さっさ引け引け 五色の独楽や御所車(ごしょぐるま)
ありやありや こりやこりや やっとな
酒がすぎたか目元が桜 梅は笑へど常(つね)の癖味(くせあぢ)に 拗ねたる松の振り

平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」


三つ子の親は七十の 賀の祝ひとて なますやら
米炊(か)し 味噌摺(す)り あたふたと
きざむ嫁菜(よめな)の姉妹(あねいもと) 色香を添へてなまめかし

約束かたき心棒(しんぼう)に やがてもうけし 子持独楽(こもちごま)
孫彦玄孫(まごひこ やしゃご)と末広(すえひろ)
黄金銭独楽(こがねぜにごま) うなり独楽(ごま)
ごんごん独楽(ごま)の鳴りもよく 天下とるとる 投げ取りの
曲はさまざま それ 綱渡り(つなわたり)

燕廻(つばめまわ)しや 風車 めぐる月日が縁となり
一寸(ちょっと)格子へ 煙管(きせる)の火皿(ひざら)が 熱くなるほど登りつめ
二階で廻る さんさん盃(さかづき)


平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」



とんだりはねたり 雷門(かみなりもん)の助六さんでは無けれども
衣紋流し(えもんながし)の居続けは しんぞ 命の雪見酒
おっとそこらで とまらんせ
止めても止まらずくるくると 寿命は尽きぬ 独楽(こま)しらべ

めでたかりける 次第なり

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平成29年、日本舞踊協会、仙台電力ホール「独楽」



演目名・「独楽(こま)」※独楽売萬作(こまうりの まんさく)
初演・昭和3年(1928)、東京・歌舞伎座 2代目 市川猿之助(1888~1963年)
作曲・3代目 常磐津文字衛(ときわず もじべえ、1888~1960年)
作詞・木村富子(1890~1944年)
振付・2代目 花柳寿輔(はなやぎ じゅすけ、1893~1970年)





初代 市川猿之助(1855~1922年)が演じたものを2代目が再演しようとしたところ、歌詞も音曲も失われており、仕方なく新作したと伝わる演目です。ところがこの出来がとても良く、たいへんな人気演目になりました。

写真は水木歌惣のもの、本文は水木歌惣事務局・上月まことが書いています。コピーや配布には許諾を得ていただくよう、お願いします。Copyright ©2019 KOUDUKI Makoto All Rights Reserved.







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